ぐりぐりブログ、はじめます。
2026年7月19日 草薙 卓朗
ことばのリハビリ デイサービス グリーン・グリーンは、令和7年4月に開設してから、気づけば1年3ヶ月が経ちました。
今日は、このブログの最初の投稿として、なぜ私がこの場所をつくろうと思ったのか、その原点からお話しさせてください。
16年前の実習、忘れられない光景
言語聴覚士の養成校に通っていた頃、私は臨床実習で失語症デイサービス「はばたき」にお世話になりました。
そこで目にしたのは、私がそれまで想像していた「リハビリ」とはまったく異なる光景でした。同じことばの困難を抱えた方々が集い、笑い合い、時に涙し、そして互いに支え合っている。専門家だけが一方的に支援するのではなく、当事者同士がつながることで生まれる力——いわゆるピアサポートの力——を、学生だった私は肌で感じました。
そして何より、そこで働いていた言語聴覚士の姿に、深く感銘を受けました。利用者さまひとりひとりのことばに、本気で向き合っている。その誠実さと専門性に、「自分もこういうSTになりたい」と強く思ったことを、今でも鮮明に覚えています。
あの実習が、グリーン・グリーンの根っこにあります。
所沢での7年間、悔しさと手応えと
養成校を卒業後、埼玉県所沢市の回復期病院に就職しました。成人の言語リハビリに専念した7年間でした。
そこで感じていたのは、悔しさだけではありませんでした。
個別訓練を積み重ねることで、ことばは確かに変わっていく。単語しか出なかった方が文で話せるようになる。声が小さかった方が、聞き返されなくなる。その回復の手応えは、毎日のように感じていました。言語聴覚士という仕事の力を、私はここで信じることができました。
同時に、悔しさも積み重なっていきました。入院中に少しずつことばを取り戻しかけている方が、退院後に「通い続けられる場所」がないまま地域に戻っていく。外来リハビリには回数制限がある。訪問では集団でのコミュニケーションの場をつくれない。
個別訓練で機能を高め、ピアサポートで「話したい」という意欲と自信を育てる。その2つを同時に提供できる場所こそが、失語症をはじめとするコミュニケーション障害を抱える方に本当に必要なものだ——。
16年前の実習の記憶と、7年間の臨床の経験が、ひとつの確信に重なった瞬間でした。
神奈川へ、そしての起業準備
その後、生まれ育った神奈川にUターンし、まずは訪問看護ステーションで働きました。
次に、地元の相武台病院に入職しました。ケアミックス病院でしたが、当時は言語聴覚士が一人もいない状態からのスタートでした。ゼロから部門を立ち上げ、採用や育成、系列施設との連携を進めながら、系列の病院・施設を合わせて約3年でST7名体制にまで増やすことができました。組織を一からつくる難しさと手応えを、身をもって学んだ時期です。
並行して、相模女子大学大学院の社会起業研究科にも、働きながら通いました。経営学を学ぶ中で得たのは、知識だけではありません。同じように地域や社会の課題に向き合おうとする、多くの仲間との出会いがありました。彼らとの議論や刺激は、今も私を支えてくれています。
「ことばのリハビリに特化したデイサービスをつくる」という目標は変わらないまま、臨床を続けながら、どうすれば地域に根ざした形で持続できるか、何度も考え直しました。資金のこと、人のこと、制度のこと。壁にぶつかるたびに、16年前のあの実習の光景を思い出しました。
そして令和7年4月、ようやくグリーン・グリーンを開設することができました。
1年3ヶ月、見えてきたもの
今では40代から90代まで、失語症・構音障害・高次脳機能障害などさまざまな背景を持つ方々にお越しいただいています。
この1年で嬉しかったことをいくつか挙げると——
- 開設当初は単語しか出なかった方が、短い文で話せるようになった
- 「電話が怖かった」という方が、ご家族に電話できるようになった
- 利用者さま同士で冗談を言い合う関係が自然と生まれた
- スタッフのST松本が日本言語聴覚士学会でポスター発表を行った
どれも小さな一歩かもしれません。でも、16年前に実習で感じた「ことばをもつ人と、ことばに困難を抱える人が、対等につながれる場所」に、少しずつ近づいていると感じています。
これからは、このブログを通じて日々の活動や地域の情報、スタッフの学びなどを発信していきます。「ぐりぐりブログ」という名前で、肩肘張らず、でも真剣に、ことばとリハビリについて語っていきます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
ことばのリハビリ デイサービス グリーン・グリーン
代表 草薙 卓朗